マラセチア菌がフケの原因
マラセチアとは別名ピチロスポルムとも言い、 フケの原因菌として発見された当初は「ピチロスポルム」と命名、研究されていたものの、 それ以前(1904)に既に発見されていた「マラセチア」と同じであったことから、 現在ではフケの原因としても「マラセチア」の名称を用いられることが多くなっています。
ここではフケをより理解して頂くため、 フケに関わるマラセチアの特徴について紹介しいます。
フケに関係があるマラセチアは3種類
マラセチアとは真菌であるマラセチア属の総称です。フケに関係のあるマラセチア
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マラセチア菌は現在確認されているだけで11種類以上存在するものの、 フケに関係があると考えられているのは、 「マラセチアグロボーサ」とする説が最も多く、 次いで、「マラセチアレストリクタ」と「マラセチアフルフル」も影響するとする説を加えた3種類が、 フケの原因とする研究結果が多くなっています。
しかし、マラセチアの種類は異なるものの、 治療方法は「マラセチアグロボーサ」、「マラセチアレストリクタ」、「マラセチアフルフル」による違いを比較した研究は殆ど存在せず、 現在においてはこれらマラセチアの種類の違いによる治療方法の違いはありません。
全ての人の頭皮に存在
このフケの原因菌であるマラセチアは、 フケが出ない人も含めて、全ての人の頭皮に存在しています。しかし、フケの中でも特に脂漏性皮膚炎が原因のフケを患う人の場合、 健康な人の1.5~2倍のマラセチアが存在します。
ペンシルバニア大学が発表した研究内容によると、 「頭皮に存在する様々な微生物において、 健常者は46%、フケ症の人は74%、脂漏性皮膚炎の人は83%がマラセチア菌が占めていた」と発表しています。
これは、フケや脂漏性皮膚炎を患う人はマラセチア菌の数が増えていることを示しています。
マラセチア菌の数はフケの重症度を決めない?
マラセチア菌の数と頭皮のフケの関係は、 「マラセチア菌の数そのものがフケ(脂漏性皮膚炎)に影響する」とする説と、 「マラセチア菌の数はフケ(脂漏性皮膚炎)に影響しない」とする説があります。「菌の数が影響する」とする説は、 2004年に発表されたカナダ トロントの健康科学センターの論文や、 2000年昭和大学藤が丘病院が発表した論文などで、 世界中のほとんどの論文は「菌の数がフケに影響する」と結論づけています。
これら論文の一部を抜粋すると、 「マラセチアフルフル(35%)とマラセチアグロボーサ(22%)が正常な被験者と比較して有意に高いレートで見られた」、 あるいは、「マラセチアフルフル、マラセチアグロボーサは、脂漏性皮膚炎の病原体とすることができる」などマラセチア菌が健常者と比較して1.5倍~2倍存在するという研究結果が多く見られます。
一方、 「菌の数は影響しない」とする説は、 2004年「Gupta and Kohil」によって発表された論文で、 「マラセチアの数と脂漏性皮膚炎には相関関係がなかった」と発表しています。
このマラセチア菌の「数の多さ」が脂漏性皮膚炎に影響するかどうかは未だ完全に答えが出ていないものの、 マラセチアの数が影響しないとする論文内においても明確に「真菌薬によってマラセチアの数を減らすことで、フケや脂漏性皮膚炎が治癒あるいは軽減した」と述べているため、 マラセチア菌の数を減らすことはフケや脂漏性皮膚炎の治療に効果があります。
マラセチア菌を抑制する薬、シャンプーについては、 をご参照下さい。
マラセチアの食餌
マラセチア菌の食餌となるのは、皮脂の「トリグリセリド(中性脂肪)」ですが、 「トリグリセリド(中性脂肪)」を食餌としてマラセチア菌の数が増えること以上に、フケにとって重要なのは、 皮脂中の「遊離脂肪酸」が増加することです。分泌物(%) | 通常(健常)時 | マラセチアが増えた状態 | 抗真菌薬治療後 |
トリグリセリド | >35 | 18 | 32 |
遊離脂肪酸 | <13 | 32 | 16 |
参考:脂漏性皮膚炎やフケの原因で皮脂腺の活動と頭皮Microfloral代謝の役割より
研究「脂漏性皮膚炎やフケの原因で皮脂腺の活動と頭皮Microfloral代謝の役割」によると、 「脂漏性皮膚炎患者の皮脂は、遊離脂肪酸が健常者と比較して増加しており、 抗真菌治療薬によりマラセチアの数が減ると、遊離脂肪酸が減り、トリグリセリド(中性脂肪)が元に戻る」としています。
また、皮脂の他の脂質(ワックス、スクアレン、コレステロールなど)はほとんど変化がなかった、としています。
言い換えると、マラセチアが、 「トリグリセリド(中性脂肪)」を食餌として、 皮脂中に「遊離脂肪酸」が増加することが脂漏性皮膚炎の原因だと述べています。
なぜマラセチアがフケの原因となるのか
マラセチアがフケや脂漏性皮膚炎の原因となる理由は未だ完全には解明されていません。しかし、世界中の多くの研究結果から、いくつかの仮説が生まれています。
これら研究によると、 脂質依存酵母である「マラセチア」は、 皮脂中の「トリグリセリド(中性脂肪)」を「酵素(リパーゼ)」で分解し、(遊離)脂肪酸に変換します。
このマラセチアによって作られる脂肪酸のうち不飽和脂肪酸である「アラキドン酸」が炎症や痛みを引き起こし、 「オレイン酸」が頭皮の剥離(=フケ)を引き起こします。
他の有力説は マラセチア菌が「トリグリセリド(中性脂肪)」分解時に利用する「酵素(リパーゼ)」が、 頭皮(皮膚)の剥離や炎症をもたらすなどです。
マラセチアがフケの原因となる理由
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ただし、マラセチアだけがフケの原因となる訳ではありません。
言い換えると、マラセチアが増え、これらの働きをしてもフケや脂漏性皮膚炎になるかどうかは、 「個人の免疫力」に依存します。
フケ、特に脂漏性皮膚炎の原因については、脂漏性皮膚炎の原因をご参照下さい。
マラセチア対策
フケや脂漏性皮膚炎の原因菌であるマラセチアの遺伝子コードは既に解明されており、 また、マラセチアの増殖を抑え、フケに効果のあるいくつかの方法があります。マラセチア菌対策
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マラセチア菌の静菌・殺菌に効果のある「ケトコナゾール」、「シクロピロックス」、「亜鉛ピリチオン」など、 多くの種類がシャンプーあるいはローションとして販売されています。
詳しくは脂性フケ・脂漏性皮膚炎に効果のあるシャンプー一覧あるいは、 ニゾラールローションをご参照下さい。
また、マラセチア菌の食餌となるトリグリセリドは、食事に大きく依存します。
言い換えると脂肪分や糖分を抑えることでトリグリセリドの産出を減少させることができます。
詳しくはフケの原因となる食べ物をご参照下さい。
その他、太陽の光もマラセチア菌の静菌、殺菌に効果があるのでは、と考えられています。
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